NISAの失敗例とできる限り損を避けるためのコツを紹介

NISAで投資できる商品には、さまざまなリスクがあるため、失敗する人もいます。リスク商品を買う以上、損失確率をゼロにすることは不可能です。

しかし、よくある失敗をしなければある程度リスクを回避できるでしょう。本記事では、NISAの失敗例とできる限り損を避けるためのコツを紹介します。

  1. NISAのよくある失敗例
    1. 下がったときに慌てて損切り
    2. 投資しすぎて緊急時の現金がなく売ってしまう
    3. 配当狙いで買ったが配当以上に株価が下がった
    4. 配当金を銀行振込にしたら課税された
  2. NISAでできる限り損を避けるためのコツ
    1. 売らざるを得ない状況を作らない
    2. 購入のタイミングを徹底的に分散させる
    3. 暴落しても将来的に上がる見込みのある商品を選ぶ
  3. NISAのメリットと注意点
    1. メリット①運用益が非課税になる
    2. メリット②口座開設手数料や管理料が無料
    3. メリット③いつでも出金できる
    4. 注意点①元本割れの可能性がある
    5. 注意点②金融機関によって取扱商品の差が大きい
  4. NISAで失敗したくないなら売らざるを得ない状況だけは作らないようにしよう

NISAのよくある失敗例

NISAの失敗例のなかでよく見かけるものは、以下の4つです。

下がったときに慌てて損切り

2024年は、値動きが激しいときがあったため、下がったときに慌てて損切りした投資家が続出しました。損切りについては「見切り千両」という格言もあり、適切なタイミングでの損切りは大損を避けるために必要な取引ではあります。

ただし適切な損切りは、企業の業績などを見て売るタイミングを慎重に見極める必要があり、株価が下がったときに慌てて売るような取引ではありません

2024年8月初旬の日経平均株価の急落は、日本企業の業績が悪かったわけではなく単に売った人が多すぎてパニックになっただけです。株価が下がっても慌てて売らないほうがいいでしょう。

投資しすぎて緊急時の現金がなく売ってしまう

資産のほぼすべてを投資に回してしまうと緊急時に現金が足りなくなってしまいます。なかには、資産の95%以上を投資に回している人もいますが、資産総額1,000万円の5%と10万円の5%では金額が全く違います。例えば資産総額が10万円しかないのに95%を投資に回した場合、現金は5,000円しかありません。

この状態で冠婚葬祭などまとまった出費があった場合は、株や投資信託を売るしかないでしょう。売らざるを得ないタイミングが安値だった場合、元本割れした商品を損切りすることになります。

そもそも2024年以降のNISAは、生涯で1人1,800万円の非課税枠が決まっているので、年間投資枠360万円を無理に使う必要はありません。緊急時の現金は、残したうえで投資しましょう。

配当狙いで買ったが配当以上に株価が下がった

NISAに限らず、配当以上に株価が下がる銘柄を選ぶと失敗します。特に業績が良くないにもかかわらず配当利回りがやたらと高い銘柄は“高配当”という魅力以上に業績への不安感や不信感が強いため、株価が下がりやすい傾向です。決算発表時に予想配当金が修正され、当初想定していた配当がもらえない場合もあります

【決算発表により配当金が修正された例(日産自動車<7201>)】

配当狙いで株を買う場合は、企業業績を見て想定通りの配当がもらえそうなのかを丁寧に判断しましょう。例えば業績による判断が難しい場合、配当利回り(年間配当金÷株価×100)が5.0%以上の銘柄は避けたほうが無難です。

配当金を銀行振込にしたら課税された

NISAで投資した株や投資信託の利益は非課税になりますが、配当は必ず非課税になるわけではありません。

NISAで配当金が課税されるケース
  • 銀行振込にしたら20.315%課税された
  • 米国株を買ったら配当金が10%課税された

米国株の配当金は、日・米租税条約に基づいて米国で10%課税されるため、NISAで購入しても非課税になるのは国内の税金(20.315%)のみです。

またNISAで購入した株の配当金は、証券口座に振り込む場合のみ非課税となります。配当金を証券口座に振り込む受取方法を証券会社では「株式数比例配分方式」と呼びます。

自動で「株式数比例配分方式」に指定される証券会社もありますが、口座開設時に選択する場合は他の受取方法を選ばないようにしましょう。また複数の証券会社に口座を開設する場合、口座開設時に他の方式を選んでしまうと、口座があるすべての証券会社について配当金受取方法が自動的に切り替わってしまうため、注意が必要です。

すでに証券口座がある人は、今の配当金受取方法が変わる可能性があることも認識しておきましょう。

NISAでできる限り損を避けるためのコツ

NISAで購入する商品は、投資なので必ずリスクがありますが、リスクを下げる方法もいくつかあります。できる限り損を避けるための主なコツは、以下の3つです。

売らざるを得ない状況を作らない

NISAに限らず投資で最も大切なのは、売らざるを得ない状況を作らないことです。上述しているように最低限の現金を確保し、暴落時に不安で売ってしまう金額で投資しなければ、2024年8月初旬の株価下落で売ることはなかったでしょう。結果論ではありますが、暴落時に売らなければ株価はおおむね回復しています。

【直近6ヵ月の日経平均株価の動き】

直近6ヵ月の日経平均株価の動き
画像引用:SBI証券

購入のタイミングを徹底的に分散させる

つみたて投資枠の定額積立などで購入のタイミングを徹底的に分散させましょう。株価上昇局面では、一括投資と比べて儲かりませんが、横ばいまたは暴落後に上昇した場合のパフォーマンスは積立投資のほうがいい傾向にあります。

【米国の主要な株価指数(S&P500)にNISAで5年間投資した場合の結果】

  積立投資
(月30万円×60回)
一括投資
(年間360万円×5回)
右肩上がり
(2019年5月1日~2024年5月1日)
+1,334万1,106円 +1,638万457円
横ばい
(1975年6月1日~1980年6月1日)
+41万5,969円 +16万3,262円
暴落後に上昇
(2007年10月1日~2012年10月1日)
+153万7,647円 +126万3,503円

NISAの一括投資と積立投資について詳しく知りたい人は、一括投資と積立投資のどっちがいい?双方のメリット・デメリットも解説をご覧ください。

暴落しても将来的に上がる見込みのある商品を選ぶ

株価暴落はいつか起こる可能性が高いため、暴落しても将来的に上がる見込みのある商品を選びましょう。長期的に見て右肩上がりが見込まれる資産に投資すれば、万が一暴落しても株価回復まで辛抱強く待つことができます

例えば、主要な米国企業およそ500社で構成される株価指数「S&P500」の場合、2000~2010年ごろまでは2回の暴落により株価が上がらなかったものの、その後は大きく上昇しています。

【1986年1月1日~2024年11月12日までのS&P500の値動き】

1986年1月1日~2024年11月12日までのS&P500の値動き
画像引用:TradingView

米国は、世界経済の中心的な役割を担っているため、今後も世界経済が成長し続ける限りS&P500が右肩上がりになる可能性は高いでしょう。NISAのつみたて投資枠で投資する場合は、S&P500に連動した運用を目指す「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」などの商品を購入すれば、米国株の上昇による利益を享受できます

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NISAのメリットと注意点

NISA(少額投資非課税制度)には、主に3つのメリットと2つの注意点があります。これからNISAで投資を始める人は、改めて確認しておきましょう。

【(参考)NISAの概要】

NISAの概要
※上場廃止のおそれがある日本株や長期投資に適さない一部の投資信託は除外
画像引用:金融庁

メリット①運用益が非課税になる

NISAであれば運用益にかかる20.315%の税金が非課税になります。例えば株や投資信託で100万円の利益がある場合、課税口座(特定口座や一般口座)では20万3,150円の税金がかかりますが、NISAなら0円です。また配当金を証券口座で受け取る方式(株式数比例配分方式)にすれば、配当金についても20.315%(復興特別所得税を含む)の税金が非課税になります。

メリット②口座開設手数料や管理料が無料

NISAは、iDeCoと異なり口座開設手数料や口座管理料が発生しません。投資金額が少ない人でも利益よりコストが高くなってしまう「手数料負け」を防げます。

NISAとiDeCoの違いについては、下記の記事で詳しく解説しているので合わせて読んでみてください。
> NISAとiDeCoの違いと目的別にどっちがいいのかを解説

メリット③いつでも出金できる

NISAで投資した商品は、いつでも売却、出金できます。老後資金目的だけでなく教育費や住宅ローンに備えた運用など、さまざまな目的に使えます。iDeCoは、原則60歳まで出金できないため、非課税で運用して自由に出金したい場合、NISAはおすすめの制度です。

注意点①元本割れの可能性がある

NISAで投資できる商品は、いずれも元本割れの可能性があります。比較的リスクが低いイメージのあるつみたて投資枠でも株への投資割合が100%の銘柄が数多く選定されているため、リスクは高めです。長期的に右肩上がりだとしても運用中に元本割れをする可能性は十分あります。絶対に元本割れしたくない人は、NISAに限らず投資そのものをやめたほうがいいでしょう。

元本割れの確率が知りたい人は、下の記事をチェックしてみましょう。
> NISAで元本割れの確率はどれくらい?安心して運用するためのポイント

注意点②金融機関によって取扱商品の差が大きい

NISAは、あくまでも非課税制度にすぎません。そのため金融機関によって取扱商品の差が大きいです。NISA口座は、証券会社だけでなく銀行や信用金庫などでも開設できますが株は買えません。投資信託を買う場合でも取扱商品は、証券会社のほうが豊富です。

【主な銀行・証券会社のNISA(成長投資枠+つみたて投資枠)の取扱銘柄数(投資信託)】

証券会社 銀行
SBI証券 1,289本 三菱UFJ銀行 396本
楽天証券 1,288本 三井住友銀行 99本
マネックス
証券
1,187本 みずほ銀行 127本
auカブコム
証券
1,138本 ゆうちょ銀行 66本
松井証券 1,155本 りそな銀行 95本
(2024年11月18日現在、CRAZY MONEY Plus編集部調べ)

大手ネット証券5社(SBI証券、楽天証券、マネックス証券、auカブコム証券、松井証券)のNISAであれば日本株や米国株、投資信託の取引手数料が無料または実質無料になるため、大手ネット証券から選びましょう。

おすすめのネット証券について詳しく知りたい人はこちらも読んでみてください。
> 新NISAにおすすめのネット証券5選!特徴や注意点と口コミ・評判を紹介

NISAで失敗したくないなら売らざるを得ない状況だけは作らないようにしよう

NISAの失敗例は、投資初心者を中心に「安いときに売ってしまった」といった内容を数多く見かけます。昨今の株高で感覚がまひしている人がいますが、バブル崩壊から日経平均株価が回復するまで30年以上、リーマンショックから米国の株価(S&P500)が回復するまで4年以上かかっています。20~30年以上投資を続けるのであれば、このような株価暴落に遭う可能性は高いです。

暴落時に慌てて売ってしまうことがないように、自分がどれくらいのリスクを取れるのか考慮したうえでNISAを始めましょう。どこまでのリスクを許容できるのかわからない人は、つみたて投資枠での投信積立から始めるのが無難です。

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