【NISAとiDeCo】使い分けのポイントを徹底解説!あなたに合う制度はどっち?

「NISAとiDeCoはどのように違うのか」「どちらから始めるべきか」など悩んでいる人のための記事です。

まだNISAもiDeCoも始めておらず、制度の仕組みや違いがわからなかったりどちらを優先して始めるべきか知りたかったりする人は、ぜひ参考にしてください。結論からいえば、優先すべきは所得控除の対象となるiDeCoです。一方、年齢や余剰資金によってはNISAのほうがおすすめな場合もあるため、詳しく解説していきます。

  1. NISAとiDeCoは併用可能!所得控除のあるiDeCoが優先だが目的に合わせて使い分けることが大切!
  2. そもそもNISAとiDeCoの違いは?
  3. NISAの特徴
    1. NISAのメリット
    2. NISAのデメリット
    3. NISAがおすすめな人
  4. iDeCoの特徴
    1. iDeCoのメリット
    2. iDeCoのデメリット
    3. iDeCoがおすすめな人
  5. NISAを優先すべき人とiDeCoを優先すべき人
    1. 老後資金準備ならiDeCo優先
    2. 教育資金準備ならNISAがおすすめ
    3. 年収が高い人ほどiDeCo優先
    4. 若い世代はNISA優先
  6. NISAとiDeCoに関するQ&A
    1. NISAとiDeCoの違いを分かりやすく知りたい!
    2. iDeCoと個人年金はどのように違う?
    3. NISAを始める際の注意点は?
    4. iDeCoの始める際の注意点は?
    5. iDeCoの手数料は高い?止めたほうが良い?
    6. あまりリスクを取りたくない人におすすめの銘柄は?

NISAとiDeCoは併用可能!所得控除のあるiDeCoが優先だが目的に合わせて使い分けることが大切!

NISAとiDeCoは併用可能できるため、「なるべく早く両方始めること」が最適な選択です。資金的に両方始めることが難しい場合は、全額所得控除の対象となるiDeCoを優先すると良いでしょう。なかには「全額所得控除の対象」と聞くと難しく感じてしまう人もいるかもしれません。これは「自分にかかる税金を抑えられるメリットがある」という意味です。

日本は、累進課税制度が導入されており高所得者ほど税金負担が大きくなります。iDeCoで積み立て(拠出)した資金は、全額所得控除の対象となる点が大きな特徴です。所得控除とは「所得から差し引く」という意味です。前述したとおり、高所得者ほど税金も高くなるため、「iDeCoに拠出した額が所得から控除されることで課税される税金が抑えられる」というメリットが生まれます。

一方でiDeCoは「自分で準備する退職金・老後資金」といった性質があるため、原則60歳までは資金の引き出しができません。また最低拠出額も5,000円となっており、資金が少ない人には難しいかもしれません。

このような場合は、NISAがおすすめです。NISAは、所得控除の対象にはなりませんが、資金の出し入れが自由で最低投資金額も100円からなので、投資初心者や資金力に不安のある人でも始めやすいでしょう。

そもそもNISAとiDeCoの違いは?

NISAとiDeCoの違いを比較して表にまとめました。

【NISAとiDeCoの違い】

新NISA iDeCo
つみたて
投資枠
成長
投資枠
利用
できる人
18歳以上
(利用する年の1月1日時点で18歳以上の成人の方が対象)
原則20歳以上65歳未満の国民年金加入者
制度の
目的
・少額で投資を始める投資家のための制度
・教育資金、住宅購入資金など目的は自由
・老後資金や退職金の備え
手数料 金融機関によっては売買手数料がかかる場合あり 加入時:2,829円
口座管理料:171円~/月
受取時:385円~/都度
※金融機関によって口座管理料と受取時手数料が異なる
非課税
期間
無期限 最長75歳まで
最低投資金額 100円~
※金融機関によって異なる
5,000円~
年間投資上限額 120万円 240万円 年間14万4,000円~81万6,000円
(加入資格によって異なる)
運用益 非課税 非課税
税制優遇 運用益が非課税になる ・運用益が非課税
・所得税や住民税が少なくなる
・受取時に支払う税が少なくなる
投資対象 長期の分散・積立投資に適したと金融庁が認めた投資信託のみ ・上場株式
・ETF
・投資信託
・定期預金
・保険
・投資信託
資金の
引き出し
いつでも入金・出金が可能 原則60歳以降の引き出しになる
こんな人におすすめ まずは少額で投資を始めたい人 株やETFなどを自分のタイミングで売買したい人 ・老後資金や退職金に不安がある人
・所得税を払っている人
(2024年9月1日作成)

2つの制度を比較すると、税制優遇が大きい点では「iDeCo」が、引き出し自由で少額から始められる点では「NISA」のメリットが大きいといえます。以降では、それぞれの制度について詳しく解説します。どちらが自分に合っているか、メリット・デメリットを把握したうえで検討しましょう。NISAとiDeCoの違いについては、こちらの記事でも解説しています。あわせて読んでみてください。
NISAとiDeCoの違いと目的別にどっちがいいのかを解説

NISAの特徴

NISAは、少額から投資が始められて利益が非課税になることが大きな特徴です。NISAは「少額投資非課税制度」とも呼ばれます。その名のとおり少額投資を始める個人投資家のための制度です。

2024年からは、新NISAが始まり制度が拡充してより使いやすい制度になりました。NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」2つの制度があります。

【新NISAのつみたて投資枠と成長投資枠】

つみたて投資枠 成長投資枠
利用
できる人
18歳以上の人
(利用する年の1月1日時点で18歳以上の成人の方が対象)
年間
投資枠
120万円
(10万円/月)
240万円
非課税保有限度額 1,800万円(成長投資枠の限度額は1,200万円)
非課税保有期間 無期限
投資対象商品 長期・積立・分散投資に適していると金融庁の基準を満たした投資信託のみ ・国内外の上場株式
・国内外のETF
・投資信託
買付方法 ・積み立て ・スポット購入
・積み立て
併用 併用可能
こんな人におすすめ ・投資初心者
・少額投資を始めたい人
・投資を始めたいが何をすればいいか不安な人
・すでにつみたて投資枠を利用中で、さらに投資先を広げたい人
・自分のタイミングで売買をしたい人
注意点 NISA口座は、すべての金融機関のなかで1人1口座しか作れない。そのためNISA口座を開設する場合は、手数料や取扱商品、貯まるポイントなどをよく確認すること
(2024年9月1日作成)

投資初心者で「投資を始めたいけれど、何から手を付けたらいいのかわからない」という人は、まずつみたて投資枠を利用しましょう。

金融機関によって異なりますが、月100円からと少額で投資ができ、一度設定すれば毎月自動で積み立てされるため、放っておいても大丈夫です。

一般的に投資信託は、長期間保有することが前提となるため、一度積立投資を始めたら相場変動に関わらず5年、10年と長期間継続することを忘れないでください。すでにつみたて投資枠を利用中で新しい投資先を探している人、個別の株式に投資したい人は成長投資枠の活用がおすすめです。

成長投資枠は、積立投資も可能ですが自分のタイミングで売買することも可能なので投資中から上級者に向いています。

下記記事でNISAの特徴やおすすめの銘柄、証券会社を紹介しています。ぜひ合わせて読んでみてください。
NISAのおすすめを徹底解説!銘柄・証券会社・組み合せ例や勉強法まで

NISAのメリット

NISAのメリットは、主に4つあります。

  1. 非課税期間が一生涯続く
  2. 積立投資もスポット購入もできる
  3. 売却することで非課税投資枠が翌年以降に復活する
  4. 引き出しが自由

通常投資で得た利益には、20.315%(復興特別所得税を含む)の税金が課せられます。例えば株式売買で10万円の利益が出た場合、通常2万315円(10万円×20.315%)が税金として差し引かれ、実際に手もとに残るのは7万9,685円です。

ところがNISA口座内で売買した場合は、利益に対して税金がかからないため、先ほどの例でいえば10万円がそのまま受け取れます。

またNISAは、積立投資もスポット購入ができる点もメリットです。「つみたて投資枠」で利用できる積立投資とは「毎月5,000円で投資信託を購入する」などと設定すると、自動で毎月一定額が積み立てされる仕組みです。日中にマーケットの値動きを気にしたり、こまめに売買したりする必要がないため、投資初心者に向いています。

一方「成長投資枠」では、自分の好きなタイミングで売買するスポット購入も可能です。国内外の株式やETF、つみたて投資枠の対象外になっている投資信託も購入できるため、投資に慣れてきた場合は、ぜひこちらも活用してみてください。

NISAの非課税限度額は、売却することで枠が復活する点もメリットです。つみたて投資枠と成長投資枠を合わせた年間限度額が360万円のため、最短で使い切ると5年かかります。しかしNISA口座で保有している投資信託や株を売却すると、売却した分の枠が翌年以降に復活して何度でも利用可能です。

NISAは、引き出しがいつでも自由な点もメリットに挙げられます。NISAは、入出金に制限がないため、教育資金や住宅購入資金といった目的資金でも、使うあてのない余裕資金でも投資に活用できます。「資金を拘束されたくない」「いつでも資金を自由に出し入れできるようにしたい」という人は、NISA口座を利用してみてください。

NISAのデメリット

NISAのデメリットには、主に以下の2つのデメリットがあります。

  1. 元本保証ではない
  2. 損益通算ができない

NISAは、元本保証ではありません。株式市場や為替相場の変動によって、価格が変わり利益が出ることもあれば、反対に損失になることもあるため、注意しましょう。とはいえ長期的な積立投資であれば、元本割れする可能性を抑えられるので安心してください。

金融庁の調査によると、投資信託を5年間保有した場合は10%ほどの確率で元本割れしますが、20年保有した場合はほぼ0%になると示されています。

もちろん運用成果が保証されるわけではありませんが、長期的な運用であれば損失を抱えるリスクが軽減できることがわかるかと思います。

NISAでは、損益通算ができない点もデメリットとして挙げられます。損益通算とは、投資で得た利益と損失を相殺して、かかる税金を減らすことです。とはいえNISA口座は、もともと利益が非課税なので、税金がかかりません。このデメリットに関しては、あまり気にする必要はないでしょう。

NISAのメリットとデメリットについては、こちらの記事でも解説をしています。
NISAはデメリットしかない?制度の内容をおさらいしつつ解説

NISAがおすすめな人

NISAがおすすめな人を紹介します。

  1. 若い世代で投資に興味がある人
  2. 少額で投資を始めたいと思っている人
  3. 長期的な運用のほかに短期での資産運用をしたい人
  4. 老後資金を貯めたい50代後半~の人

NISAは、若い世代に向いています。なぜなら長期の積立投資は、早くから始めることで資産運用の効果が大きくなるからです。例えば25歳から毎月1万円を60歳の定年まで35年間積み立てて年率5%で運用した場合のシミュレーションは、以下のとおりです。

【毎月1万円を年率5%で35年積み立てた場合】

元本 運用益 合計額
420万円 約716万円 約1,136万円
(2024年9月1日作成)

少額でも長期間継続することで将来の大きな資産形成に役立つことがわかります。

NISAは「投資をしたことがない」「余裕資金があまりなく少額投資を検討している」といった人にもおすすめの制度です。NISAは、金融機関によって異なりますが、最低投資金額100円程度で投資を始めることができます。また投資信託のほかにも単元未満株取引ができる証券会社であれば1株から日本株へ投資できるため、少額投資が可能です。

NISAのつみたて投資枠は、長期的な運用を前提としています。そのため長期的な運用をしたい人にもおすすめです。投資信託の積み立ては長く続けるほど元本割れのリスクを抑えることが期待できます。10年、20年と長期的な視野で資産形成したい人は、つみたて投資枠を活用してみてください。

一方、短期でリターンを狙いたい人には成長投資枠の活用がおすすめです。成長投資枠は、自分のタイミングで売買ができるため、短期的に利益を出したい人にも向いています。

とはいえ成長投資枠の年間投資上限額は240万円です。売却して枠が復活するのは翌年以降となるため、あまり短期売買を繰り返すと枠を使い切ってしまう点には十分注意してください。

NISA制度は、老後資金を準備したい50代後半の人にもおすすめです。iDeCoは、拠出期間が10年以上であれば60歳から引き出せますが、始めるのが遅いと引き出せる期間が後ろ倒しになってしまいます。その点NISAは、いつでも引き出し自由なので「運用しながら少しずつ資金を引き出す」という使い方も可能です。

iDeCoの特徴

iDeCoは「自分で準備する年金・老後資金」のことです。日本の公的年金(国民年金・厚生年金)は、原則65歳から受給開始です。2022年度末の国民年金と厚生年金の全国平均年額月額は、以下のとおりです。

国民年金 厚生年金
5万6,428円 14万4,982円
※2022年度末時点の全国平均年金月額

注意したいのは、これが「2024年現在年金を受給している世代の平均」という点です。日本の年金制度は、若い世代の払った保険料をシニア世代に給付する世代間の支え合い(賦課方式)をうたっています。しかし現在の日本は、超少子高齢化が進んでいるため、こうした世代間の支え合いが機能しなくなっています。

このような社会背景をふまえて個人で備える年金・老後資金「iDeCo」が生まれました。iDeCoは、老後資金として将来に備えられるだけでなく全額所得税控除の対象で、税制優遇がある点がNISAとの大きな違いです。日本は、高所得者ほど納付する税金が増えます。給与明細を見ても額面と手取りが大きく異なっているはずです。

所得に課される税金は、所得税と住民税です。住民税は一律10%ですが、所得税は年収によって5~45%と異なり所得金額が大きいほど負担が重くなります。

iDeCoに拠出した金額は、全額所得控除となるため、課税所得を減らして税金負担を軽減できる点は大きなメリットです。「所得税を現在払っている」「将来の老後資金が心配」といった人は、iDeCoを早めに始めることをおすすめします。

iDeCoのメリット

iDeCoのメリットは、以下のようなものが挙げられます。

  1. 運用で得た利益は非課税
  2. 拠出額が全額所得控除の対象で節税になる
  3. 受取時にも税制優遇がある
  4. 原則60歳まで引き出せないので使ってしまう心配がない
  5. 定期預金や保険型の商品もある

iDeCoのメリットとしては、NISAと同じく運用益が非課税になる点が挙げられます。通常投資で得た利益には20.315%(復興特別所得税を含む)の税金がかかりますが、iDeCoやNISAは税金がかからないため、お得です。

またiDeCoで積み立て(拠出)した金額は、全額所得控除の対象となるため、所得税を支払っている人にとっては節税になります。日本は、累進課税を採用しているため、高所得者ほど税金負担が大きくなる仕組みです。そのためiDeCoの所得控除を活用すれば課税所得を減らすことが期待できます。税金負担を軽減できるため、所得税を納めている人は、なるべく早くiDeCoを始めてほしいところです。

iDeCoは、受取時にも税制優遇が受けられます。iDeCoの受け取り方は「年金として運用しながら少しずつ取り崩していく方法」「退職金のように一括で受け取る方法」があります。受け取り方によって「公的年金等控除」「退職所得控除」といった優遇措置が受けられます。

原則60歳まで引き出せない点も、iDeCoのメリットです。特に「預金口座に残高があると気が大きくなって使ってしまう」「貯金がなかなかできない」という人に向いています。途中で使ってしまうことを防げるため、貯めるのが苦手な人は、ぜひiDeCoを活用して将来の資産形成に役立ててください。

iDeCoには、定期預金や保険といった「元本確保型」の商品もあります。とはいえ、こうした商品はローリスクローリターンの商品なので、利息が微々たるものです。場合によっては、手数料のほうが高くなってしまうこともあるため、注意しましょう。

iDeCoのデメリット

iDeCoの主なデメリットは、以下の3つです。

  1. 手数料がかかる
  2. 60歳まで引き出せない
  3. 加入できない人もいる

iDeCoは、さまざまな手数料がかかります。例えば初回加入時の手数料の2,829円や、運用中の月171円といった具合です。とはいえ加入時の手数料は1回のみ、運用中の手数料は年間2,052円ほどなので、あまり気にしなくていいでしょう。手数料よりも、受けられる恩恵のほうが大きいといえます。

iDeCoは、60歳まで原則引き出し不可です。貯金が苦手な人にとって引き出せないことは、大きなメリットにもなりえます。しかし近々に使う予定がある目的資金を運用することには向いていません。iDeCoは、あくまでも「自分で備える老後資金」が大前提です。そのためリタイア前に使う資金は「NISA」、老後資金は「iDeCo」といった具合に2つの制度を上手に使い分けましょう。

基本的にiDeCoは、誰でも加入できますが、例外もあるため、注意してください。以下のような人は加入対象外となります。

【iDeCoに加入できない人】

国民年金の未加入者、未納の人 iDeCoの加入条件は、国民年金保険の加入者。保険料を納付していない人や農業年金加入者は対象外。ただしiDeCo加入時にきちんと納付すれば加入可能
満65歳以上の人 65歳になると加入資格が喪失しiDeCoに拠出できなくなる。受給要件も「加入期間10年以上」のため、リタイア世代は注意
企業型DCでマッチング拠出中の人 企業型の確定拠出年金で会社が負担する掛金に加えて加入者がプラスして拠出する「マッチング拠出」を利用している人はiDeCoと併用できない
(2024年9月1日作成)

iDeCoの主なデメリットは、3つありますが、「メリットのほうが大きいので迷っている」「不安に感じている」といった人では、なるべく早く始めることをおすすめします。iDeCoのメリットや職業別のデメリットについては、以下の記事で解説しているのでぜひ読んでみてください。
iDeCoは本当にやらないほうがいい?職業別のデメリットを解説

iDeCoがおすすめな人

iDeCoがおすすめの人を紹介します。

  1. 退職金がない人
  2. 年金額に不安がある人
  3. 貯金が苦手な人
  4. 所得税を払っている人

会社が退職金制度を設けていない場合、iDeCoで将来に備えておくことをおすすめします。以下では、35年間iDeCoを継続した場合、目標金額から逆算して毎月いくら積み立てるべきかについてシミュレーションしてみました。

【目標金額と毎月の積立額・35年間継続した場合】

目標金額 毎月の拠出額
(年率3%)
毎月の拠出額
(年率5%)
毎月の拠出額
(年率8%)
1,000万円 1万3,486円 8,803円 4,360円
1,500万円 2万228円 1万3,204円 6,540円
2,000万円 2万6,971円 1万7,605円 8,719円
(2024年9月1日)

長期間継続することで、毎月の積立額が少額であっても大きな資産形成につながることがわかります。また年金額に不安のある人、専業主婦(主夫)の人(所得がない人は所得控除の恩恵は受けられない点は注意)もiDeCoを検討してみてください。iDeCoの最低投資金額は、5,000円です。毎月5,000円を35~65歳になるまでの30年間、年率5%で運用した場合のシミュレーションを見てみましょう。

【毎月5,000円を年率5%で運用し35年間積み立てた場合】

元本 運用益 合計額
210万円 358万円 568万円
(2024年9月1日作成)

さらに、この568万円を年率5%で運用しながら毎月5万円ずつ取り崩していくと「77歳8ヵ月」まで受け取ることが可能です。年金額や老後資金に不安がある人は、ぜひ運用して資産寿命を延ばす方法を検討してみてください。

iDeCoは、60歳まで引き出せないため、「預金残高があると浪費してしまう」「貯金できない」という人にもおすすめです。強制的に資金を引き出せないようにすることで、使ってしまう心配がなくなります。

iDeCoがおすすめな人の最後は、現在所得税を払っている人です。給与明細を見たとき額面金額から税金が多く引かれて嫌な気分になったことがある人は多いのではないでしょうか。iDeCoは、拠出額が全額所得控除の対象です。課税所得額が少なくなることで税金負担を軽減する効果があるため、おすすめです。

NISAを優先すべき人とiDeCoを優先すべき人

NISAを優先すべき人とiDeCoを優先すべき人の具体例を紹介します。NISAとiDeCoは、併用できるため、2つとも活用するのが最適です。しかし資金面に不安でどちらにするかで迷っている人は、以下を参考にしてください。基本的な考え方としては、将来使う予定のある資金であれば「NISA」、余裕資金で使うあてのないものは「iDeCo」での運用がおすすめです。

こちらの記事でお金の増やし方や投資の方法を解説しているので、ぜひ読んでみてください。
お金の増やし方を徹底解説|投資や節約などポイントも紹介

老後資金準備ならiDeCo優先

「老後資金の準備をしたい」「年金額に不安がある」「退職金制度が職場にない」という人は、iDeCoを優先しましょう。iDeCoは「自分で備える老後資金」が前提となるため、リタイア後の生活に不安を感じている人はiDeCoを優先して始めるのがおすすめです。iDeCoは、拠出額が全額所得控除の対象ですから、節税をしながら老後資金を積み立てられ、受取時も税制優遇を受けられます。

積み立てた資金は、原則60歳までは引き出せないため、つい使ってしまう心配がない点もメリットの一つです。

教育資金準備ならNISAがおすすめ

教育資金の準備であればNISAがおすすめです。iDeCoは、60歳まで引き出せません。そのため教育資金をiDeCoで積み立ててしまうと肝心なときに引き出せない可能性があります。教育資金に限らず、住宅購入資金、リフォーム資金といった用途が決まっている資金や、何年後に使うなど使う時期が決まっている資金は引き出し自由なNISAの活用がおすすめです。

年収が高い人ほどiDeCo優先

年収(所得)が高い人は、iDeCoを優先してください。iDeCoに拠出した金額は、所得から差し引くことができるため、年収が高い人ほど節税効果が上がります。以下で具体的にどのくらいの節税効果が見込めるのかシミュレーションしてみましょう。

【30歳会社員、企業年金なしの人が65歳まで月2万3,000円拠出した場合の節税額】

  年収
400万円
年収
600万円
年収
800万円
年間
節税額
4万1,400円 5万5,200円 8万2,800円
35年間の
節税額
144万9,000円 193万2,000円 289万8,000円
(2024年9月1日作成)

年収が高い人ほど、節税効果が高いのはもちろんですが、長期間継続すると積もり積もって節税額が大きくなることがわかります。所得税を払っている人、税金が高いと感じている人はiDeCoを優先して節税することをおすすめします。

若い世代はNISA優先

大学生や新入社員など若い世代で投資に関心がある場合は、NISAを優先しましょう。もちろんNISAとiDeCo、2つ併用することが望ましいですが、まだ手取り給与が少なく運用に回せる資金がない場合は引き出し自由で最低投資金額が100円とハードルの低いNISAがおすすめです。特に若い世代は、これから結婚や出産、住宅購入や子どもの養育資金、教育費など出費が多くなります。

iDeCoで資金を拘束して使えないようにすることも選択肢の一つですが、それよりも運用の自由度が高いNISAを優先したほうが良いでしょう。資金に不安のある人におすすめなのが、ポイント投資です。VポイントやPontaポイント、楽天ポイントをNISA口座の投資信託購入に利用できるネット証券もあるため、現金での運用に不安がある人はポイントを活用した投信積立などを活用してみてください。

NISAとiDeCoに関するQ&A

NISAとiDeCoに関するQ&Aをまとめました。NISAとiDeCo、どのように違うのか、どちらを始めるべきか悩んでいる人は参考にしてください。

NISAとiDeCoの違いを分かりやすく知りたい!

NISAは「個人投資家のための資産運用制度」、iDeCoは「個人が備える老後資金」と2つの制度は目的が異なります。

【NISAとiDeCoの違い早見表】

NISA iDeCo
目的 教育資金、住宅購入資金、将来のための備え、など自由 老後資金(年金・退職金)として
投資
対象
・つみたて投資枠:長期の分散積立投資に適していると認められた投資信託
・成長投資枠:国内外の株式やETF、投資信託など
・投資信託
・保険商品
・定期預金
最低投資金額 100円~
(※金融機関によって異なる)
5,000円~
引き出し可否 いつでも出し入れ可 原則60歳までは引き出し不可
手数料 口座管理料0円
売買手数料:金融機関によって異なる
加入時:2,829円
拠出時:171円~
受取時:440~
※金融機関によって異なる
税制
優遇
・運用益は非課税 ・掛金は全額所得控除
・受取時にも税制優遇あり
・運用益が非課税
こんな人におすすめ まずは少額で資産運用を始めたい人 老後のために備えたい人
(2024年9月1日作成)

所得税を支払っている場合は、掛金が所得控除の対象となるiDeCoを優先したほうがよいかもしれません。しかし「用途が決まっている資金を運用」「少額投資を始めたい」という人は、NISAのほうがおすすめです。

iDeCoと個人年金はどのように違う?

iDeCoと個人年金保険の特徴を表にまとめました。

【iDeCoと個人年金保険のメリット・デメリット】

メリット デメリット
iDeCo 1. 掛金が全額所得控除の対象
2. 運用益が非課税
3. 受取時にも税制優遇制度がある
4. 60歳まで引き出せないので使う心配がない
5. 運用成果によっては利益が大きくなる可能性がある
1. 運用成果によっては元本が割れる可能性もある
2. 自分で運用商品を選ぶ必要がある
3. 初回および運用時、受取時に手数料がかかる
個人年金保険 1. 個人年金保険料控除の対象になる場合がある
2. 保険料の払込期間や受取期間が選択できる
3. 受け取れる年金額が計画的に準備できる
4. 保険会社に運用を任せられる
1. インフレ時には資産が目減りする
2. 中途解約すると払い込んだ保険料より下回る可能性がある
3. 投資先や運用手法などが不透明な場合がある
(2024年9月1日作成)

「絶対に運用をしたくない」「将来受け取る金額を確定させたい」という人は、個人年金保険が良いでしょう。しかし利率が低くインフレ時に資産が目減りするリスクがあるため、注意が必要です。

NISAを始める際の注意点は?

NISAを始める際に知っておきたい注意点を紹介します。

  • NISA口座は1人1口座
  • 積立投資は長期が前提

NISA口座は、すべての金融機関のなかで1人1口座しか開設できません。そのため口座開設する際は、証券会社の手数料や対応しているクレジットカード、貯められるポイントなどをよく確認しておきましょう。NISA口座は、別の金融機関へ移すこともできますが、手続きには1ヵ月程度かかるケースもあり、その間は運用できない点にも注意してください。

また積立投資は、長期的な運用が前提となっています。金融庁が公表している調査によると、積立投資をした場合、5年間の保有では10%ほど元本割れする確率が、20年保有するとほぼ0%になることがわかっています。そのため短期的な相場の下落に焦ったり不安になったりせず、10年、20年といった長期視点で資産運用するようにしてください。

NISAの始め方、証券会社の選び方はこちらの記事でも解説しています。ぜひ読んでみてください。
NISAの始め方は?金融機関選びや口座開設の手順から解説

iDeCoの始める際の注意点は?

iDeCoを始める際の注意点を紹介します。

  • 拠出期間が10年必要なので50代後半の人は注意
  • 60歳までは引き出し不可
  • 運用商品によっては手数料負けする

iDeCoは、拠出期間が10年必要になります。50代後半の人は、運用期間が短くなってしまうため、注意しましょう。運用期間が長く取れない場合は、NISAの活用がおすすめです。また60歳までは引き出しできないため、使う予定のある資金はiDeCoではなくNISAで運用しましょう。反対に「あると使ってしまう」「貯金が苦手」という人は、iDeCoを活用して将来に備えることがおすすめです。

NISAと違いiDeCoには、元本確保型の商品もあります。しかし利率が低いため、手数料のほうが高くなるケースもあるので注意しましょう。iDeCoの定期預金型金利の一例を紹介します。

【定期預金型の金利一例】

商品名 利率 100万円に対する1年間の利息
三井住友信託DC
固定定期5年
0.200% 2,000円
イオンiDeCo
定期預金5年
0.150% 1,500円
あおぞらDC定期1年 0.13% 1,300円
(2024年9月1日作成)

iDeCoの口座管理料は、金融機関によって異なりますが、最低でも月171円かかります。年間では、2,052円かかるため、かなり大きな金額を運用しない限りは手数料のほうが高くなります。

iDeCoの手数料は高い?止めたほうが良い?

iDeCoにかかる手数料は、高くないので安心してください。最初の加入時に事務手数料として2,829円がかかる以外は、金融機関によって異なるものの年間で2,052円ほどの口座管理料がかかります。

しかしiDeCoには、所得控除の対象となったり運用益が非課税になったりする税制優遇があります。手数料がかかるデメリットよりも、メリットのほうが大きいでしょう。

日本の年金制度は、若い世代が払った保険料でシニア世代の年金にする「世代間の支え合い(賦課方式)」で長年運用されてきました。しかしこのシステムは、超少子高齢化によって崩壊しかけています。自分たちがシニア世代になるとき年金がどれだけもらえるかはわかりませんが、今の試算よりも多くなる可能性は低いでしょう。

そのため、なるべく早いうちから老後資金を備えておくに越したことはありません。

あまりリスクを取りたくない人におすすめの銘柄は?

資産運用に興味はあるけれど、あまりリスクを取りたくない人におすすめの銘柄を紹介します。基本的には、投資先が分散されているものを選ぶと良いでしょう。iDeCoは、複数銘柄へ分散投資できるため「米国株式+バランス型」や「日本株式+金連動」など、異なる投資先で分散させるのもおすすめです。

特に守りの資産といわれる「金投資」は、リスクをあまり取りたくない人にぜひ検討してもらいたい銘柄といえます。

※トータルリターンは2024年8月31日時点

iDeCoやNISAは、口座開設した金融機関によって扱っている商品が異なります。事前によく確認しておきましょう。ポートフォリオの組み方はこちらの記事でも解説しています。ぜひ参考にしてください。
NISAでのポートフォリオの組み方のポイントとは?おすすめのポートフォリオ例も紹介