投資とは、中長期的な成長に期待して自分の資産を投じる行動です。一方、投機は短期的な価格の変化に着目して利益を追求します。
投資は、うまく実行すれば大きな損失リスクを避けながら着実に資産を増やせるのが特徴です。一方、投機は成功すれば短期間で大きな収益が期待できます。どちらにもメリット・デメリットがありますが、長期での資産成長を目指して運用する場合は、投機よりも投資が適しています。
今回の記事では、投資と投機の違いや主要な金融商品ごとに、投資と投機がどのようなものかについて整理しました。資産運用の方法を検討するうえで、ぜひ参考にしてください。
・投資と投機は利益の源泉やリスクの水準が異なる
・投資は長期で取り組めて少額からでも始められるが一気に資産を増やすには不向き
・投機は短期で一気に資産を増やすチャンスがあるが失敗すると大損になる
・株やFX、暗号資産(仮想通貨)など複数の資産は取引方法によって投資にも投機にもなる
・投資と投機それぞれに適したタイプの人を紹介
投資と投機の違い
投資と投機は、どちらも利益を追求する行動ですが、価格上昇の源泉や実行する期間、リスクの高さなどに違いがあります。まずは、投資と投機それぞれの特徴と違いについてまとめました。
投資とは?
投資は、将来の資産成長に着目して中長期的な視点で利益を追求する行動を指します。有価証券でいえば中長期的な成長が期待できる株式や債券、投資信託などへの投資が当てはまります。また不動産や金なども長期で運用する場合は、有効な投資先の一種です。
投資では、主に以下の2つを利益の源泉とします。
・キャピタルゲイン:資産価格の上昇に伴う売買益
・インカムゲイン:配当金や分配金、賃料収入など定期的得られる現金収入
特にインカムゲインは、定期的に発生する性質のため、長期投資を継続するほど総額が大きくなるのが特徴です。また投資においては、獲得した利益を再投資に回して、さらに利益を大きくすることもできます。
このような行動をとると利益率は一定でも獲得できる利益額は年々大きくなる「複利効果」を享受できます。
長期での資産運用のポイントについては、こちらの記事も参考にしてください。
資産運用とは?種類や初心者に適した運用方法をわかりやすく解説
投機とは?
投機とは、短期間の価格変化に着目して一気に利益を稼ぐ手法です。金融市場の商品の多くは、一方向に価格が動き続けることはなく上下を繰り返しながら価格が変動しています。投機では、本質的な資産成長よりも、こうした短期的な上下の変化を予測して取引を行うのが特徴です。
FXやCFD、株式の信用取引などが、投機目的での取引手段としてしばしば活用されています。また通常の株式取引でも短期間での値動きに着目して利益を稼ぐデイトレードやスキャルピングなどは、投機の性質が強い取引方法です。
投機では、基本的に短期しかポジションを保有しないため、収益の源泉のほとんどは価格変動によるものとなります。そのため投機で成功するには、短期間で大きな規模のポジションを持つことが必要です。
うまくいけば一気に大きな利益を獲得できますが、失敗すれば大損の可能性もあるハイリスクハイリターンな手法といえます。
投資と投機の大きな違い
投資と投機の特徴をまとめると次の通りです。
投資 | 投機 | |
基本的な戦略 | 経済成長や資産の成長に着目して実行 | 一時的な価格の変動に着目して実行 |
リスク | 低~高までコントロールできる | 一般的に高い |
リターン | 投資先により異なる | 一般的に高い |
取引期間 | 中長期 | 短期 |
利益の源泉 | 長期の資産価格の上昇 分配金・配当・賃料収入・金利収入などのインカムゲイン |
短期での価格変動 |
以上のように投資と投機は、一見似ているようで大きく特徴が異なることがわかります。取引期間で見ると投資は、一般的に中長期的に取り組むものですが、投機は短期での利益を追求します。
投機では、すぐに大きな利益を追求することになるため、一般的にハイリスク・ハイリターンな取引になりやすい傾向です。一方、投資では投資資産の選び方によってリスクや期待リターンをある程度コントロールできます。
例えば株式投資はリスクが高めですが、債券投資であればリスクを抑えることが可能です。この点で投機は、基本的に上級者向けの手法といえるでしょう。投資は、商品選びを工夫すれば初心者から上級者まで取り組みやすい取引方法です。
また投機では、もっぱら価格変化の利益を追求します。一方、投資は価格変化によるキャピタルゲインとインカムゲインの双方から利益を享受可能です。長期投資により、資産規模の拡大ペースが加速する複利効果も期待できます。
投資の4つのメリット
投資における主なメリットは、次の4つです。
・少額から始められる
・長期で取り組めば複利効果が期待できる
・インフレ対策にも有効である
これらのメリットに魅力を感じるのであれば、ぜひ投資を始めてみてください。
投資に適した資産をお探しの方は、こちらの記事も読んでみましょう。
主な資産運用8種類を向いている人やリスクも含めて解説
大きな損失リスクを抑えられる
投資では、運用方法を工夫することで大損のリスクを抑えて着実に資産を増やしていくことが期待できます。金融商品とひとくちにいっても低リスクなものからハイリスクなものまでさまざまです。
損失リスクを抑えるためには、まずリスクが低めな資産を選ぶのが有効です。さまざまな資産に分散投資するバランス型の投資信託や債券などは、リスクを抑えた投資に適した資産といえます。
また多数の銘柄に分散投資することで、特定銘柄の値下がりが資産全体に与えるダメージを抑えることも可能です。このように工夫次第で損失リスクをコントロールできるため、長期で安心して取り組めるのが、投資のメリットといえます。
少額から始められる
投資は、長期にわたって取り組むもののため、最初は少額から始めることも可能です。近年は、少額投資に対応したサービスも増えています。
例えばネット証券にしばしば見られる単元未満株の投資の場合、数百円~数千円程度から投資を始められるといった具合です。
投資信託であれば、100円から購入できる証券会社もあります。またクレジットカード利用などで貯まったポイントを活用して、現金を使わずに投資できることも魅力的です。
こうしたサービスを活用して毎月少しずつ余剰資金を投資に回していけば、徐々に資産規模の拡大が期待できるでしょう。数十年にわたって長期で継続的に投資すれば、最終的には充分な規模の資産を築くことが可能です。
長期で取り組めば複利効果が期待できる
長期投資し続けることで複利効果を享受することもできます。複利効果とは、獲得した利益を再投資に回して利益を拡大する方法です。例えば元本100万円を年利回り10%で10年間運用すると、毎年の資産規模と年間の収益は次のようになります。
資産額 | 年間の利益 | |
投資開始時点 | 100万円 | - |
1年後 | 110万円 | 10万円 |
2年後 | 121万円 | 11万円 |
3年後 | 133万1,000円 | 12万1,000円 |
4年後 | 146万4,100円 | 13万3,100円 |
5年後 | 161万510円 | 14万6,410円 |
6年後 | 177万1,561円 | 16万1,051円 |
7年後 | 194万8,717円 | 17万7,156円 |
8年後 | 214万3,589円 | 19万4,872円 |
9年後 | 235万7,948円 | 21万4,359円 |
10年後 | 259万3,742円 | 23万5,794円 |
このように利益率が変わらなくとも、獲得した利益をそのまま再投資することで年間の資産増加幅が拡大していくことがわかります。
複利効果は、長期投資だからこそ得られる効果です。利回りが同一と仮定すると投資期間が長くなるほど効果は大きくなっていきます。なお獲得した金利収入や配当、分配金を現金で受け取った場合は、その現金を投資に回さなければ複利効果は起きないため、注意しましょう。
長期投資のメリットやデメリットについては、こちらの記事も参考にしてください。
長期投資とは?メリット・デメリットやおすすめの投資先を解説
インフレ対策にも有効である
投資は、インフレ対策においても有効な点もメリットの一つです。インフレとは、世の中の商品価格が上昇する現象のことで、経済成長が進む国や地域では一般的に見られます。現金で資産を保有しているとインフレが進んだ場合は、同じ金額で購入できるものの量が減少してしまいます。
しかし年間のインフレ率よりも高い利回りで投資を継続しておけば、資産規模がインフレよりも早いペースで増えていくため、インフレの影響を抑えることが可能です。
投資信託や株式、不動産などは、インフレ局面において価格が上昇しやすい資産といえます。インフレ対策として、有効な投資先といえるでしょう。
投資の3つのデメリット
投資における主なデメリットは、次の3つです。
・完全に損失を回避するのは困難である
・長期の予測は難しい
投資を始めようと考えている方は、以上の点に注意しましょう。
すぐには大きな利益が出ない
投資を堅実に進めるとなると、短期間で大きな利益を得られる可能性は低いといえます。投資は、短期の価格変動をとらえるのではなく長期的な資産成長に着目して行うものです。
そもそも短期間での大きな利益を狙うものではありません。長期的に成長が見込める投資先でも市場での取引状況のなかで一時的に含み損が発生する可能性もあります。
投資で成功するためには、目先の損益にとらわれず、一度投資し始めたらじっくりと取り組むのが望ましいでしょう。投資は、投機と異なり短期での大きな利益を追求するのが難しい傾向です。
完全に損失を回避するのは困難である
投資においては、完全に損失リスクを回避することは基本的に困難です。投資は、投機と比べると損失リスクを抑えられる取引手法ですが、リスクをゼロにすることはできません。
長期的な成長が期待できる投資先でも、予測が外れて長期的に値下がりする可能性はあります。経済が悪化した結果、一時的に大きな損失が発生する可能性もあるでしょう。
低リスクな商品から高リスクなものまでさまざまな投資先がありますが、リスクゼロの商品はありません。投資にチャレンジする以上、必ず損失リスクがあることは理解し余裕資金で取り組むように心がけましょう。
長期の予測は難しい
どんな資産価格であっても長期予測はプロでも困難です。投資は、長期での資産成長に着目して行うわけですが、どの投資先が長期で成長するか100%予測することはできません。
現時点で将来有望と思われている投資先も、数年・数十年経過すれば成長に陰りが出て思うように利益が得られないリスクもあります。
過去の事例でいうと日本の株価は1990年ごろまでは右肩上がりでしたが、その後のバブル崩壊で低迷し、当時の最高値を更新するまで実に30年以上かかりました。
今右肩上がりで長期での成長が見込まれる投資先も、将来長期的な下落トレンドに変わるリスクがないとも限りません。投資先の完全な予測は不可能で、投資は「常に不確実性が伴うなかで実行するもの」ということを理解しましょう。
投機の2つのメリット
投機の主なメリットは、次の2つです。
・取引先を柔軟に変更できる
これらの点に魅力を感じて資産運用に精通している方は、投機的な取引にチャレンジしてみることも一案です。
短期間で大きな利益を狙える
投機では、基本的にハイリスク・ハイリターンな金融商品および取引方法を選択します。自分の予想通りに市場が動けば、短期間で一気に資産を増やせる可能性があるでしょう。
FXのレバレッジを活用した取引のように投機で活用する取引のなかには、実際の値動きよりも大きな収益を獲得できる手法があります。
例えば100万円を元手にレバレッジ10倍で、1米ドル100円のときに日本円売り・米ドル円買いのFX取引をしたとしましょう。その日のうちに為替が101円に動けば10万円の利益を獲得でき、投資元本と合わせると110万円まで資産が増えることになります。
【FXレバレッジ10倍での損益】
円ベースのポジション価値 | 米ドル円
為替相場 |
米ドルベースのポジション価値 | |
①投資開始時 | 1,000万円※ | 100円/米ドル | 10万米ドル |
②1日後 | 1,010万円 | 101円/米ドル | 10万米ドル |
得られる利益(② – ①) | 10万円 |
※為替手数料は考慮せず
市場価格が思わぬ方向に変化したときの損失リスクが高い分、このように短期間で大きく資産を増やすチャンスがあるのが投機的な取引の特徴です。
短期で資産を増やす方法を検討している方は、次の記事も参考にしてみてください。
10万円の短期投資で元手を増やす方法や銘柄を紹介
取引先を柔軟に変更できる
投機的な取引は、短期で行うもののため、柔軟に取引先を変更できることがメリットです。投資の場合は、長期で取り組むのが基本になるため、すぐに成否を判断するのが困難で結果的に投資先をすぐに変更することも難しいといえます。
一方、投機は短期で利益を出す手法のため、期待通りの方向に市場が動かなければ、すぐに取引先を変更することが可能です。そのときどきの市場の値動きを見極めながら、柔軟に対応できることが特徴といえます。
ただし市場動向を正確にとらえ、短期の見通しを立てて取引を実行するのは難しく金融市場に関する高度な知識が必要となる点には注意しましょう。
投機の3つのデメリット
投機の主なデメリットは、次の3つです。
・価格変動が大きく精神的負荷がかかる
・高度な知識が必要になる
投機的な取引において短期で大きな利益を獲得しようと考えている方は、以上のデメリットに注意を払って取り組みましょう。
大きな損失を被るリスクがある
投機的な取引は、基本的にハイリスクハイリターンのため、投資と比べて大きな損失を被るリスクが高い点がデメリットです。特にFXや株式の信用取引のように元本より大きな規模のポジションを保有して投資する手法の場合、失敗すれば投資元本以上の損失が発生するリスクがあります。
例えばFXにおいて1米ドル100円のときに元本100万円でレバレッジ25倍になるように米ドル買い円売りのポジションを持った場合で確認してみましょう。4%円高に動いて1米ドル96円になった段階で、損失額が100万円となり投資元本が全損となります。
【FXレバレッジ25倍での損益】
円ベースのポジション価値 | 米ドル円為替相場 | 米ドルベースのポジション価値 | |
①投資開始時 | 2,500万円※ | 100円/米ドル | 25万米ドル |
②投資終了時 | 2,400万円 | 96円/米ドル | 25万米ドル |
発生する損失(② – ①) | ▲100万円 |
もし短期間にこれ以上の円高となった場合、当初の元本をすべて失うだけでなく「追証」という形で口座に追加資金を差入れなければなりません。
近年の国内のFX事業者におけるサービスは、強制的に反対売買をする「ロスカット」で損失を抑える機能を備えている場合もあります。しかしそれでも投資と比べて大きな損失を負うリスクが高いといえるでしょう。
価格変動が大きく精神的負荷がかかる
投機は、短期的な市場価格の変動に着目して実行するものです。そのため自分が保有する資産価値も市場価格の変動により目まぐるしく変化します。自分の資産の多くを投機に割り当てていると資産の変動が非常に大きくなってしまうでしょう。
投機や投資に慣れていない方の場合、この変動の大きさゆえに市場の値動きがストレスになってしまったり、相場が気になってほかの作業が手につかなかったりすることも少なくありません。
精神的な負荷が大きくなりすぎないように投機は、余裕資金で行うのが鉄則です。また取引について冷静に判断できる資産規模およびリスクの高さで取り組むようにしましょう。
高度な知識が必要になる
投機で成功するためには、高度な専門知識が必要となります。投機で成功するためには、金融市場の価格動向の分析と予測が不可欠です。
そのためには、市場や取引する金融商品の特性、経済動向などに対する幅広い知識が必要となります。またチャートや過去の取引データを活用した市場分析などの専門的なスキルも要求されます。
資産運用の初心者では、金融や経済に関する知識が不足している場合もあるでしょう。また投資と投機では、求められるスキルが異なります。
そのため「投資でうまくいっていても投機の短期取引では利益を獲得できない」という方も少なくありません。
商品ごとの投資と投機
ここからは、主要な金融商品ごとの投資・投機に当てはまる取引方法について整理します。同じ商品でも取引方法によっては、投資にも投機にもなり得る場合がある点に注意しましょう。
株式
投資 |
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投機 |
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株式は、取引方法によって投資にも投機にもなり得ます。まず投資先企業の成長を見据えて長期的に保有する手法であれば、基本的に投資の一種といえるでしょう。
リスクの高い投資先としては、新興企業の小型株投資が挙げられますが、その企業の成長を支える目的で長期投資するのなら投資の一種です。
また「値動きが安定した大企業の株を保有する」「高配当株に投資して配当収入を積み上げていく」といった手法も投資といえます。
一方、チャートの形状を分析して短期でトレードするデイトレードやスキャルピングなどは、投機の一種です。信用取引もレバレッジを活用して短期間の利益額を増やす取引手法のため、投機に近いものといえるでしょう。
株式投資についてさらに深く学びたい場合は、こちらの記事を参考にしてください。
株式投資の勉強方法とは?おすすめの勉強方法5選と効率よく学ぶためのポイント
投資信託
投資 |
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投機 |
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投資信託は、その商品の性質上、多くが投資に適したものとなっています。投資信託は、そのファンドのルールのもとで多数の資産に分散投資する金融商品です。リスク分散が働くため、大きな損失リスクを抑制した商品性となっています。
また投資信託の基準価額は、1日(営業日のみ)に一度更新されるため、FXや株式のデイトレードのような短期売買がそもそもできない仕組みです。このような特性から長期保有して資産を着実に成長させる投資に適しているといえます。
ただし例外として「ブルベア型」と呼ばれる投資信託は、投機目的で活用できる銘柄です。これらの商品は、特定市場の数倍もしくはマイナス数倍の値動きとなることを意図して作られています。
例えば4倍ブルの日経平均に連動する商品が適切に運用されていた場合、日経平均が1日に2%動けば、投資信託は8%変動するといった具合です。
このタイプの商品については、短期間で大きな利益を獲得できる可能性があるため、投機に適した銘柄といえるでしょう。
FX
投資 | 低レバレッジでの長期保有、スワップポイント狙いの投資 |
投機 | 高レバレッジでの短期取引 |
FXは、投機するための商品と見られる場合もありますが、実際には取引方法により投資・投機の双方で活用可能です。
FXでは、投資元本と保有するポジションの規模の倍率を「レバレッジ」で表現します。同じ通貨ペアの場合、レバレッジが高いほどハイリスク・ハイリターンな取引です。
レバレッジを低めに維持しておけば、実は長期で特定のポジションを保有し続けることもできます。例えば今後長期的に円安が進むと予測して日本円売り米ドル買いの通貨ペアを保有し続けるならば、これは投資の一種といえるでしょう。
またFXでは、金利の低い通貨を売り高い通貨を買うと「スワップポイント」という一種の金利収入を得られます。通貨ペアの選び方によっては、長期にわたってスワップポイントを獲得することで利益を積み上げることが可能です。このような取引手法も投資の一種となるでしょう。
レバレッジを高めたり、1日~数日の為替変動に着目して利益を追求したりすると投機の一種となります。FXは、国内業者の場合、レバレッジを最大25倍まで高められるため、利用者の判断一つで相応にハイリスク・ハイリターンな投機取引が可能です。
先物取引
投資 | 特定資産の代替としての長期保有やリスクヘッジ目的での保有 |
投機 | 短期の価格変動を見込んだ取引 |
先物取引も投機・投資のどちらも活用できます。そもそも先物とは、ある商品を将来の決められた日(期日)に取引時点で決められた価格での売買を約束する取引です。
ある商品(原資産)の将来の価値上昇が見込まれれば、少し高い価格でもいいから今のうちに購入価格を決めておきたいと考える人が増えて先物価格は上昇します。その逆の局面では、下落することとなり実質的に原資産に連動する商品として取引されるケースが多い傾向です。
先物取引の原資産には「金」「プラチナ」「天然ガス」といったコモディティや、株式指数などがあります。原資産として採用されているものは、直接現物を売買するのが難しい、不可能といったものが多い傾向です。そのため原資産の代わりとして先物へ長期投資する方も少なくありません。
一方、先物取引ではFXのようにレバレッジを活用して元本よりも大きなポジションを保有することも可能です。そのためハイリスク・ハイリターンなポジションのもと短期的な値動きに着目した投機的な取引にも活用できます。
そのため先物取引も利用者の考え方によって投資・投機の双方に活用できる金融商品です。
暗号資産(仮想通貨)
投資 | ・暗号資産(仮想通貨)の長期的な時価総額拡大を見込んだ長期投資 ・レンディングやステーキングを活用したインカムゲインの獲得 |
投機 | 高い価格変動に着目して行う短期取引 |
暗号資産(仮想通貨)は、リスクが高い資産ですが投資・投機の双方で活用が可能です。
短期的な利益にとらわれず特定通貨の長期的な発展に期待して保有する場合は、リスクの高い投資の一種といえます。近年は、多数の暗号資産の保有ができるため、複数通貨を保有した分散投資も可能です。
また日本の暗号資産取引所のなかには、暗号資産を貸し出して金利収入を得る「レンディング」や、暗号資産の維持に貢献することで報酬を受けられる「ステーキング」のサービスが備わっている場合があります。これらの仕組みを使うと安定した金利収入を得られるため、やはり投資の一種となるでしょう。
一方、暗号資産は一般的に価格変動の大きな資産のため、価格変動に着目して短期で売買を行えば投機的な取引となります。一部の日本の事業者では、暗号資産のレバレッジ取引にも対応しています。レバレッジを活用した短期取引は、より一層投機的な取引といえるでしょう。
不動産投資
投資 | 賃料収入や長期での不動産価格の値上がりを見込んだ取引 |
投機 | 極端な高利回り・低価格物件で短期的な利益を狙う取引 |
個人の不動産取引は、投資に該当するものがほとんどで投機的な取引に該当するケースは多くないでしょう。不動産は、投資が軌道に乗っていれば毎月賃料収入を獲得できるのが特徴の一つです。
長期にわたって着実に賃料収入を積み上げていくことを主とした取引は、まさに投資の一つといえるでしょう。区分マンション投資のように得られる賃料が少ない場合は、ローン返済と相殺すると毎月の収支が当面赤字化することをわかっていながら投資するケースもあります。
この場合もローン完済後の賃料収入や将来売却時の売買益を期待して投資しているため、やはり投資の一種に変わりありません。
不動産のなかには、極端に高利回りで低価格な物件もあり、このような物件を短期で運用して収益化を狙う取引方法もあります。このような取引手法は、投機の一種といえますが、流動性があまり高くない不動産を個人が機動的に売買することは難易度が高く投機的な取引を実行できる機会は多くないでしょう。
クラウドファンディング
投資 | 基本的には少額から安定収益を追求するタイプの商品が主 |
投機 | 投機的取引ができる商品自体が少ない |
クラウドファンディングは、オンライン上で少額の資金を不特定多数の投資家から募ってファンドが取り決めた特定の手法で運用する商品で、基本的に投資目的で購入するのに適した商品です。購入者は、運用の結果得た収益を源泉として分配金を受け取ります。
クラウドファンディングは、そもそも運用期間が数ヵ月~数年程度と決まっていて、途中売却ができない、もしくは限られている商品がほとんどです。株価のように市場価格が変動するものでもないため、短期での売買差益を獲得する方法が基本的にありません。
そのためクラウドファンディングは、分配金を主な源泉とした安定した投資収益を獲得するのに適した金融商品の一つといえます。
投資がおすすめな人
投資と投機を比較したときに投資がおすすめな人は、次の通りです。
・余剰資金が少ない人
・老後に向けた資産形成を進めたい人
・中高年や高齢者の人
・精神的負荷をかけずに資産を増やしたい人
長期で投資をしたい人
長期的な視点で取り組み、着実に資産を増やしていきたい場合は、投資を行うのが適しています。
ゆとりある老後や結婚・新築など将来の目的を達成すべく資産形成を目的としている方は、短期的な利益を過度に追求しないで中長期的な資産価値の上昇や、投資先から得られるインカムゲインに着目するのが得策です。
過度にリスクの高い投資は避けながら分散投資を心がけて、安定した資産運用を目指しましょう。
余剰資金が少ない人
余剰資金が少ない人は、まず投資から始めるのが得策です。投機は、ハイリスク・ハイリターンなため、失敗すると投資元本が大きく毀損するリスクがあります。もともとの余剰資金が少ない状態で失敗すると、蓄えがなくなって日常生活に支障が出る恐れもあるでしょう。
投資であれば少額から少しずつ積み立てる形で取引を進められます。さらに投機と異なりリスクの低い手法もあるため、元本を一気に毀損するリスクを最小化することが可能です。
老後に向けた資産形成を進めたい人
老後に向けた資産形成については、若い人も中高年も投資で進めるのがよいでしょう。若い人の場合は、まだ老後まで長い時間があります。長期で成長が見込まれる市場や銘柄に投資することで、失敗して投資元本を大きく失うリスクを減らしながら大きな資産を築けるでしょう。
中高年や高齢者の人
「中高年でもう老後まで時間があまりない」「すでに高齢者となっている」という方も投資での資産形成が得策です。この時期に資産を大きく減らしてしまうと、そこから資産を回復させるのが困難です。
老後においては、年金や労働で得られる収入が現役世代より減るケースが多いため、追加の余剰資金を投資に充てるのも難しくなります。そのためリスクを抑えた投資で資産を守りながら運用していくのが大切です。
精神的負荷をかけずに資産を増やしたい人
資産運用にストレスを感じたくない人にも投資が適しています。投機を行うと取引先の市場動向を常に注視することが必要です。仕事などほかの活動をしているときも市場の値動きが気になってしまうでしょう。
自分の想定外に市場が動けば、ストレスが増大して精神的な不調につながる方もいます。長期投資であれば日々の値動きをあまり気にする必要がなくなるため、投資に手間がかかりません。損失リスクの低い資産を選んで投資すれば、価格変動によるストレスを軽減できます。
投機がおすすめな人
投機的な取引に適した人は、次のような人です。
・余剰資金が豊富な人
・別に資産形成を進めている人
・市場分析が得意もしくは好きな人
・市場の値動きを気にせず冷静でいられる人
・短期で一気に資産を増やしたい人
短期で一気に資産を増やしたい場合は、投機的取引を選択するほかありません。基本的に投資とは、将来の値上がり益やインカムゲインに着目するもののため、短期のうちに利益を上げるには不向きです。
投機的取引で成功すれば、一気に資産を急拡大させるチャンスがあります。ただしその分、自分の予測が外れれば、資産を一気に失うリスクがある点には注意しましょう。
余剰資金が豊富な人
余剰資金が豊富にある人は、その一部で投機的な取引にチャレンジすることも一定の合理性があります。
余剰資金の一部だけを投機に充てるのであれば、仮に失敗して元本が大幅に毀損したとしても、まだ潤沢な資金が手もとに残っているため、深刻な状況には陥らずに済むでしょう。もしうまくいけば、さらに資産規模を拡大させられます。
別に資産形成を進めている人
すでにほかの資金を投資に振り分けて資産形成を進めている人は、余剰資金の一部を投機的取引に充ててみることも一つの考え方です。
仮に投機的取引に失敗したとしても、残りの部分の資産形成を継続していけば老後に向けた充分な資産を築ける余地はあるでしょう。
ただし投機に充てる資金の規模を抑えることが重要になります。なぜなら投資と比べて投機的な取引の規模が大きいと、元本を失ったときの資産全体に与えるインパクトが大きくなってしまうからです。
市場分析が得意もしくは好きな人
市場を分析して予測するのが得意・好きな人は、投機的取引にチャレンジするのもよいでしょう。一般的に日常生活のなかで金融市場のことを学んだり分析したりするのは、手間がかかる作業です。時には、ストレスを感じるときもあるでしょう。
しかし人によっては、そのような作業が好きで半ば趣味で実行する人も少なくありません。そのようなマインドセットで市場に向き合える人であれば、投機を行っても過度にストレスを感じずに済むでしょう。
市場の値動きを気にせず冷静でいられる人
投機を行ったとしても市場の値動きがあまり気にならないストレス耐性の強い方も投機的取引を行う余地があります。資産が目まぐるしく増減することにストレスを感じるかどうかは、人それぞれです。
例えば高収入で余裕のある人であれば、資産の増減を意識せずに日常生活を送れる可能性もあります。そのような人は、うまくいけば資産を一気に増やせる投機に取り組むことも一案です。
長期で資産形成を進めるなら投資に取り組むのがおすすめ
投資と投機は、一見似たような行動に見えますが投資の期間や収益の源泉が大きく異なります。また投資は、銘柄選びや投資先の分散でリスクをある程度コントロールできますが、投機的取引はほとんどがハイリスクハイリターンです。
どちらにもメリット・デメリットがあるため、自分の資産運用に対する意向を整理したうえで自分に合った手法を選択しましょう。なお老後に向けた資産形成など長期で着実に資産を増やしていきたい方は、投資を選択するのが得策です。