投資信託は、損をした人や投資そのものに否定的な人を中心に「やめたほうがいい」と言われることがあります。投資に絶対はありませんが、筆者が2020年から旧つみたてNISA・NISAで保有している投資信託では120万円以上の含み益が出ているので、決して「やめたほうがいい」とはいえないでしょう。
この記事では、投資信託が「やめたほうがいい」と言われてしまう理由について解説します。実際の運用結果をもとに投資したほうがいい銘柄の選び方も紹介するので、投資信託を買おうかどうか迷っている人は、ぜひ参考にしてください。
投資信託をやめたほうがいい3つの理由(デメリット)
投資信託をやめたほうがいい主な理由は、3つあります。
①商品によってリスクに差がありわかりにくい
投資信託は、一言でまとめるのがおかしいくらい商品によってリスクに差があり、わかりにくい金融商品です。同じ会社が運用している似た名前の投資信託でも、投資先が違えばリスクも大きく異なります。
【投資信託のリスクの違い】
銘柄名 | リスク (5年・年率) | リターン (5年・年率) |
---|---|---|
eMAXIS Slim 先進国債券 インデックス |
6.86% | 5.07% |
eMAXIS Slim 先進国株式 インデックス |
20.86% | 18.75% |
米国など投資先に日本以外の国を含む商品の場合、株価だけでなく通貨の価値変動によっても投資信託の価格(基準価額)が変わります。例えば米国株に投資する投資信託の場合、円安米ドル高は価格の上昇要因、円高米ドル安は価格の下落要因です。
リスクを理解しないまま商品を購入し、価格が下落したときに後悔した経験などから「投資信託を買うのはやめたほうがいい」と主張する人は、一定数いるでしょう。
②保有している間は半永久的にコストが発生する
投資信託を保有している間は、半永久的にコストが発生します。投資信託のコストは、価格に反映されており、間接的に負担しているのが特徴です。投資信託の主なコストとしては、信託報酬が挙げられますが、実際に負担しているのは信託報酬に限りません。
【投資信託のコスト】
信託報酬 | 管理・運用してもらうための経費 |
---|---|
売買委託 手数料 | 株などの売買時に金融機関に支払った手数料 |
有価証券 取引税 | 株などの売買時に負担する税金 |
保管費用 | 海外で株などを保管する場合に発生する費用 |
監査費用 | 決算時に監査法人に支払う費用 |
その他費用 | 事務処理などで発生する費用 |
項目ごとにどれくらいの費用が発生しているかは、年1回公表される「交付運用報告書」で確認できます。投資信託のコストは、ファンドによって大きく異なり、年率0.1%前後のものから1.5%を超えるものまでさまざまです。
金融機関の営業員が勧誘する投資信託のなかには、コストが高いものも含まれています。それゆえコストが高い投資信託をいい商品だと誤解した人を中心に「やめたほうがいい」と主張している可能性も考えられるでしょう。
③売りたいときにすぐ売れない
投資信託は、売りたいときにすぐ売れません。投資信託の価格が変わるのは毎営業日の20時までの1回だけであり、当日売却の申込締切時間は原則15時までです。株のように値段を指定して売ることができず、価格がいくらになるのかわからないまま注文を出さなければいけません。
投資先に米国などの海外が含まれる投資信託の場合、売却価格は翌営業日の投資信託の価格(基準価額)になります。売りたいときにすぐ売れないだけでなく、売りたい価格で売れないことなどから「やめたほうがいい」と考える人はいるでしょう。
投資信託をやめたほうがいい人の特徴
投資信託をやめたほうがいい人の主な特徴は、3つです。誰かの意見を真に受けて投資信託を買ってしまう人は、うまくいかなかったときに他人のせいにして全く成長しない傾向があるので、やめたほうがいいでしょう。
有名人やインフルエンサーの発信内容に盲目的に従う
有名人やインフルエンサーの発信内容に盲目的に従う人は、投資信託を買わないほうがよいでしょう。具体的には、有名人などが「オルカンがおすすめ!」と言った場合、その意見だけを真に受けてオルカン(eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー))を買っているような人です。
こういった人は、少し投資信託の基準価額が下がると「やっぱりあの人の言っていることがおかしいのでは?」などと不安になってしまい、慌てて売ってしまいます。有名人やインフルエンサーの発信内容を参考にするのは構いませんが、盲目的に従うことはやめましょう。
10万円の貯金すらない
10万円の貯金すらない人は、投資信託に限らず投資そのものをやめたほうがいいです。冠婚葬祭やスマホの故障などが重なると、5万~6万円くらいはあっという間になくなります。10万円の貯金すら確保できていない状態で投資を始めてしまうと、現金がなくて困ったときに投資信託を売らざるを得ない状況に陥ってしまう可能性が高いです。
売るタイミングによっては損をすることもあり、お金が必要なときに投資信託の売却を繰り返していたら資産は思い通りに増えないでしょう。
価格変動にどうしても敏感になってしまう
価格変動にどうしても敏感になってしまう人も、投資信託に限らず投資そのものをやめたほうがいいでしょう。例えば投資信託を100万円分買った場合、1日1万~2万円くらいの変動は何度もあります。毎日値動きに一喜一憂していたら、仕事に集中できません。
価格変動に敏感な人は、できる限り少額から投資信託を積み立てて、少しずつ慣れていきましょう。個人差はありますが、慣れれば価格変動もそこまで気にならなくなります。
実際に旧つみたてNISA・NISA(つみたて投資枠)で投資した結果
実際に筆者がSBI証券の旧つみたてNISAとNISA(つみたて投資枠)で投資した結果は、120万円以上の含み益が生まれています。
2020年1月に投信積立をスタートし、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う株価下落で一時は20%以上のマイナスになったものの、2024年4月末時点では元本の74%の利益が出ています。投資したタイミングが良かったので儲かっているのは事実ですが、投資信託は「やめたほうがいい」と言えるほどひどい商品ではないことが理解できるのではないでしょうか。
コストが高く、いい運用成績が望めない銘柄を避けて地道に積立投資を続ければ、投資信託でも株価上昇時にある程度の利益が見込めます。
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投資信託で銘柄を選ぶ際の3つのチェックポイント【初心者用】
投資信託で銘柄を選ぶ際の主なチェックポイントは、以下の3つです。
このチェックポイントにあてはまらない投資信託でも、いい運用成績を出しているものはあります。しかし初心者の場合は、低コスト銘柄を選んだほうが無難です。具体的な銘柄が知りたい人はこちらを確認してみてください。
積立NISAおすすめ銘柄10選!【2023年最新版】初心者も安心の選び方と証券会社比較
①つみたて投資枠の対象銘柄か
まずは、つみたて投資枠の対象銘柄であるかを確認しましょう。各銘柄の詳細画面で「NISA(つみたて)」といった表記があれば、つみたて投資枠の対象銘柄です。
各金融機関のサイトから投資信託の検索画面を開いて「つみたて投資枠対象銘柄」を指定すると、簡単に絞り込めます。
SBI証券の場合、投信から「銘柄検索・取扱一覧」、「つみたて投資枠対象銘柄」の順に選択すると、つみたて投資枠の対象銘柄のみを一覧できます。
\つみたて投資枠の対象銘柄が豊富/
②信託報酬(コスト)は0.2%以内か
つみたて投資枠対象銘柄のなかから、信託報酬(コスト)が0.2%以内のものを選びましょう。つみたて投資枠の対象であれば、すべて購入手数料は無料ですが、信託報酬は銘柄によって異なります。投資先がほとんど同じ商品でもコストに差があるため、複数銘柄を比較してできる限りコストが低いものを選びましょう。
【投資先が同じ商品の信託報酬】
銘柄名 | 信託報酬(年率) | 主な販売会社 |
---|---|---|
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) |
0.09372%以内 | SBI証券 楽天証券 |
iシェアーズ 米国株式(S&P500) インデックス・ファンド |
0.0938%程度 | |
iFree S&P500 インデックス |
0.198% |
③投資先に米国株が50%以上含まれるか
株価の上昇に乗り遅れないためにも、投資先に米国株が50%以上含まれる銘柄を選びましょう。米国株は、長期的に見て他の国の株価よりも上昇率が高い傾向です。
【米国(青)・日本(オレンジ)・中国(緑)の主な株価指数の比較】
(2007年1月~2024年5月1日までの値動き)
米国は、世界の中心でAppleやAmazonなど日本でも有名な企業が数多くあります。投資をするうえで外せないため、米国株に投資してない銘柄は選ばないようにしましょう。ちなみに「オルカン」の愛称で有名なeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)でも投資先の60%前後は米国です。
投資信託を買う際の注意点
投資信託を買う際の主な注意点は、以下の5つです。お金を増やすことばかりに目が向きがちですが、投資の目的や目標資産額を見失わないようにしましょう。
投資の目的や目標の資産額を決める
投資信託を買う前に、投資の目的や目標の資産額を決めましょう。老後のため、子どもの教育資金のためなど、目的によって目標利益率・金額・運用期間が異なります。
【投資目的ごとの違い】
目的 | 目標利益率 | 必要金額(一例) | 運用期間(目安) |
---|---|---|---|
子どもの教育資金 | 年率4.5~4.6% | 約1,000万円 | 18年 |
マイホームの頭金 | 年率12.2~12.3% | 約700万円 | 10年 |
老後資金 | 年率3.7~3.8% | 約2,000万円 | 30年 |
オルカン(MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス)に連動した運用を目指す商品であれば、過去の実績を見ると年率7%程度の利益が見込めます。教育資金や老後資金なら、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)をはじめとした投資信託を買えば十分に達成が期待できるでしょう。
マイホームの頭金が目的の場合、月3万円の積立金額では目標金額に達しない可能性があります。月4万1,000円以上に積立金額を増やしてオルカンで達成させるか、300万円をeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)に一括投資する必要があるでしょう。
なお商品の平均利益率は、過去の値動きから計算したものにすぎず、将来の利益を保証するものではありません。運用期間中にリーマン・ショック級の暴落が発生した場合、達成できない可能性がある点は考慮しましょう。
投資先や投資方針を確認する
投資信託を買う際は、投資先や投資方針を確認しましょう。投資信託の購入時に目論見書(説明書)を必ずチェックする決まりになっていますが、きちんと読まない人も少なくありません。例えばeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の場合、「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円換算ベース)に連動する投資成果をめざして運用を行います」と記載されています。
MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスとは、MSCI社が23の先進国・地域と24の新興国・地域から2,840銘柄の大型株・中型株を選定した株価指数です(引用:MSCI ACWI Index )。銘柄の入れ替えは年4回行われます。
銘柄の入れ替えによって最新の優良銘柄に分散投資できるメリットがある一方で、株価下落時や為替が円高になったときは投資信託の価格が下がります。オルカンであっても投資先は、すべて株式のため、リスクが高めの投資信託ということは覚えておきましょう。
最悪の場合を想定しておく
投資信託を買う際は、常に最悪の場合を想定しておきましょう。eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)やeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)などの人気商品は、2018年に運用がスタートしており、値動きが良かった時期の運用実績しか出てきません。連動した運用を目指す指数からリーマン・ショック前後の値動きを見ると、どちらも最大50%下落しています。
【リーマン・ショック前後のオルカン(青)とS&P500(オレンジ)の値動き】
株式に投資する投資信託を買う場合は、購入価格の半値になったとしても売らずに持ち続けられるか考えたうえで購入金額を決めましょう。
NISAやiDeCoを積極的に利用する
投資信託を買う際は、NISAやiDeCoを積極的に利用しましょう。NISAやiDeCoであれば投資で得られた利益が非課税になるほか、iDeCoなら所得税や住民税の優遇も受けられます。
【NISAとiDeCoの概要】
NISA | iDeCo | |
---|---|---|
非課税 投資枠 (年間) | 360万円 | 14万4,000円 ~ 81万6,000円 |
非課税 保有期間 | 無期限 | 75歳まで |
非課税 保有限度額 | 1,800万円 | なし |
投資 対象商品 | 株式、投資信託 (※) | 投資信託 元本確保型 |
税制優遇 | 利益の非課税 | 利益の非課税 所得税や住民税の優遇 |
出金制限 | なし | 原則60歳まで 出金不可 |
開設時 手数料 | 無料 | 2,829円 |
口座管理料 | 無料 | 月171円~ (投資した月) |
対象年齢 | 18歳以上 | 20歳以上 65歳未満 |
どちらかというと、余計な費用がかからないNISAがおすすめです。
NISAの恒久化とは?現制度との比較やNISA開始のメリットを解説
お金がある人も積立投資から始める
お金がある人も積立投資から始めましょう。退職金などでまとまったお金があると、ついつい思い切って一括投資をしてしまう人もいます。しかし2024年4月30日時点の株価は、かなり高いです。為替も34年ぶりの円安米ドル高水準にあり、米国株を主な投資先にしている商品が多いため、投資信託の価格(基準価額)は極めて高いといえるでしょう。
【eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の運用開始日以降のチャート】
今後も上がる可能性はありますが、株価の下落も想定して少しずつ積み立てていくほうがいいタイミングともいえます。
投資信託は銘柄選びさえ間違えなければやめたほうがいい投資ではない
投資信託は、銘柄選びさえ間違えなければ、やめたほうがいい投資ではありません。少なくとも旧つみたてNISAがスタートした2018年ごろから投資を始めて、オルカンやS&P500など無難な低コスト銘柄を選んだ人は儲かっています。NISAのつみたて投資枠対象銘柄からコストの低い商品を選んで、暴落しても売らずに長期間持ち続ければ利益が出る可能性は高いです。
ただし暴落時に不安になって売ってしまう人は一定数いるので、仮に購入価格の半値まで下がったとしても耐えられる金額から始めましょう。これから投資を始めるなら、低コスト銘柄を豊富に取り扱うネット証券がおすすめです。SBI証券をはじめとした大手ネット証券でNISAを開設して、積立投資から始めましょう。
新NISAにおすすめの証券会社はどこ?各社の特徴を踏まえつつ解説
\長期投資に適した投資信託が豊富/