「株の買い時・売り時を判断することはプロでも難しい」といわれますが、ある程度の傾向があることはご存じでしょうか。この記事では、株の買い時・売り時はいつなのかを実例をもとに解説します。売買のタイミングがわからなくて悩んでいる人や株式投資を始められない人は、ぜひ参考にしてください。
株の買い時と判断できる3つのタイミング
株の買い時と判断できる主なタイミングは、以下の3つです。値動き(チャート)で判断する人もいますが、会社の業績や一時的な株価下落などで判断したほうがわかりやすいでしょう。
増資は「銘柄名 ir」で検索すると、ニュースリリースから確認可能です。本業の収益回復も「銘柄名 ir」で検索し、最新IR資料(決算説明資料)をチェックすることでわかります。天災やテロなどは、Yahoo!ニュースをはじめとしたニュースサイトで簡単に確認できるでしょう。実際の例は、各見出しでチャートや銘柄などを掲載しています。
成長目的の増資(新規の株式発行)
成長目的で実施される増資は、買い時のタイミングです。増資は、新規の株式発行となるため、短期的には株価の下落要因となりますが、中長期的には株価の上昇につながることもあります。例えば2024年1月17日に新株予約権を割り当てることを2023年12月28日に公表したJIA<7172>は一時800円前後まで下落しました。しかし2024年7月現在は1,600円を超えています。
【JIA<7172>のチャート】
成長目的の増資は、規模拡大の準備とも捉えられるため、増資で株価が下がっている銘柄があれば購入を検討してみましょう。
本業の収益回復
これまで不調だった業績が、何らかの理由で回復している銘柄は買い時と判断できるでしょう。例えば新型コロナで打撃を受けた百貨店は、外国人観光客の急増などにより業績が回復し、株価も急上昇しています。
【三越伊勢丹ホールディングス<3099>のチャート】
好業績が明らかな銘柄を買うよりも、今まで業績が不調で将来的な業績回復が見込まれる銘柄のほうが、株価は上がりやすいでしょう。
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天災やテロなどを理由とした株価下落
天災やテロなどを理由とした株価下落は、会社の業績悪化に直接関係がない限り買い時と判断できます。例えば東日本大震災で日経平均株価は急落しましたが、震災後は上昇しています。
【東日本大震災前後の日経平均株価】
ただし天災やテロなどで直接業績に悪影響があった会社は、必ずしも買い時とはいえません。例えば原発が稼働できなくなった東京電力ホールディングス<9501>の株価は、2024年7月現在でも震災前と比べて50%前後低い水準です。
株の売り時と判断できる3つのタイミング
一方で、株の売り時と判断できる主なタイミングは、以下の3つです。
持続性が見込めない利益で株価が上がった場合は、収益の減少が明らかになるにつれて株価も下がるため、売り時といえます。例えば企業の不正や健康被害の発覚は、「組織ぐるみで何かしらの隠ぺいをしている」と考えるのが自然であり、根本的な組織改革がされない限り同じような不祥事を繰り返す可能性が高いです。
また銀行の破たんなどを理由とした株価下落は、直接関係のない企業でも景気の悪化により売上・利益が減ることが多いため、そこまで株価が下がっていない場合はいったん売ったほうがいいでしょう。実際の例は、各見出しでチャートや銘柄などを掲載しています。
持続性が見込めない利益による株価上昇
持続性が見込めない利益による株価上昇は、売り時のタイミングの一つです。ゲームなど流行り廃りの激しいものは、飽きられて徐々に利益が落ちてくる可能性があるため、株価も下がる傾向があります。例えば「モンスト」の大ヒットで暴騰したMIXI(ミクシィ)<2121>は、2024年7月現在でも収益を上げているものの株価は低調です。
ゲームは、ヒット作を出すのが非常に難しく以前と比べて開発費も高騰しているため、よほどのことがない限り最高値を更新するのは困難でしょう。
【MIXI<2121>のチャート】
一過性の利益が評価されて株価が上昇している場合は、長期投資が目的だったとしても利益を確定したほうが賢明です。
企業の不正や健康被害などの発覚
企業の不正や健康被害などの発覚は、売り時と判断できるでしょう。断言はできませんが、一度不正をした会社は、再発防止策を講じてもまた別の不正を平気でする傾向があります。例えば三菱自動車工業<7211>のリコール隠しや燃費試験における不正行為、2024年6月6日に上場廃止したアウトソーシングのグループ内で発生した不正会計が例として挙げられるでしょう。
特に三菱自動車工業は、2000年と2004年に発覚したリコール隠しにより株価が大幅に下落し、2024年7月現在でも不正発覚前の株価を回復できていません。
【三菱自動車工業<7211>のチャート】
不正により絶対に株価が下がるわけではありませんが、わざわざ信用できない会社の株を持つ理由もないといえます。売る際は損失が出る可能性が高いものの、20年保有しても株価が上がらない三菱自動車の例を見れば、不正を起こしていない別の銘柄で仕切り直すほうが賢明です。
銀行の破たんなどを理由とした株価下落
銀行の破たんなどを理由とした株価下落は、株価の回復まで時間がかかる傾向があるため売ったほうがいいでしょう。特にリーマンショックのような大手金融機関の破たんが発端となる株価暴落は、暴落前の株価に回復するまでに少なくとも数年はかかります。
【リーマンショック前後のS&P500(米国の主要な株価指数)のチャート】
特にリーマンショックでは、銀行株の回復に時間がかかり、例えば三菱UFJ銀行<8306>はリーマンショック前の株価を回復するまでに約15年かかっています。
【三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>のチャート】
ただし売却のタイミングによっては、極めて安い株価で売ってしまう可能性があります。そのためタイミングを逃してしまった場合は、株価が回復するまで待ったほうがいいでしょう。
株の買い時・売り時について初心者からよくある疑問・質問
株の買い時・売り時について初心者からよくある疑問をまとめました。
日々の値動き(チャート)から判断できないの?
買い時や売り時でよく使われる判断材料として、チャートの移動平均線(一定期間における株価の終値の平均)から形成される「ゴールデンクロス」と「デッドクロス」が挙げられます。短期間の移動平均線(短期線)が長期間の移動平均線(長期線)を下から上に突き抜けると株価が上昇する傾向があり、これをゴールデンクロスといいます。デッドクロスは、ゴールデンクロスの逆です。
【ゴールデンクロスとデッドクロス】
ただしチャートで買い時・売り時を判断する手法は、投資家の間でよく知られています。多数の投資家が同じ取引をすれば、ゴールデンクロスやデッドクロスが出たタイミングではすでに買い時や売り時を逃している可能性もあるため、注意しましょう。チャートによる買い時・売り時は、過去の値動きから見た経験則にすぎないため、将来の値動きがわからない状況で正しく判断することは難しいです。
チャートは、売買のタイミングを見計らう指標の一つではあるものの、過信しすぎないほうがいいでしょう。投資家によって考え方は異なりますが、企業業績などの理由があったうえで補助的に使うことをおすすめします。
今買い時の株は?
サイバーエージェント<4751>、JIA<7172>、⼿間いらず<2477>などが挙げられます。詳しくは「【2024年7月】これから伸びそうなおすすめ銘柄」で解説しています。
配当・優待株の買い時は?
配当・優待株は、値動きを見てあまりにも高い株価でなければ、買い時を気にせずに購入してもいいでしょう。ただし配当や優待で人気のある銘柄は、権利確定日(株主の権利有無を確定する日)の直前に株価が上がり、確定後は下がる傾向があります。各銘柄の権利確定日がいつなのかを確認して、権利確定日の直前・直後は売買を控えましょう。
株の買い時・売り時を気にするよりもまずは始めてみよう
株の買い時・売り時は、プロでも判断が難しいといわれています。この記事に限らず、売買のタイミングとして紹介しているものは、過去の経験から導き出された傾向にすぎません。買い時を気にして株価を眺めているだけでは、買わないままタイミングを逃してしまう可能性があります。
経験を積むことで売買のタイミングも研ぎ澄まされる可能性が高いため、まずはゼロになってもいい金額で株式投資を始めてみましょう。株式投資を始めたい場合は、日本株の手数料が無料になるSBI証券がおすすめです。チャートや銘柄の情報なども株アプリから簡単に確認できます。
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